館長の言葉


「美しい丘の国が虐殺の現場になった。しかし今新たになりつつある」。今回はアフリカ、

ルワンダからの女性マリールイズさんのお話をお伝えします。

ルワンダという国、美しい丘のあるところという意味だそうです。赤道から南下、年間

平均気温25度、かってはドイツの植民地、第1次大戦でべルギーの植民地にかわり、い

まは独立して「あらたな国つくり」で発展しています。その近況をお話してくださいま

した。谷百合子さん(新発寒教会信徒)が中心になって、多くの団体が志を寄せ、札幌

にお招きして講演会を開催しました(当センター会場です)。

 マリールイーズさんは、内戦前に青年海外協力隊の一員として日本、福島で活動しまし

たが、帰国されてからまもなく民族的対立が激化して万をこえる殺戮のさなかにおかれま

した。地続きのアフリカですから隣国へ脱出しますが、それで難民の一団に紛れ込みます。

その体験からお話され、それは「奇跡」としかいいようのないことと話されました。

 脱出するときひとりの子を背負い、ふたりの手をひき、肩には小さなバックでした。ご

夫君は仕事で離れたところにいたのでそのまま分かれ分かれでした。小さなバックにはフ

ランス語辞書、聖書、そして小額のお金が入っていました。隣国に逃げるとき、足手まと

いの子どもたちと一緒でしたから、かえって群れと離れたために狙われないで命が助かっ

たのです。たどり着いた難民キャンプでは、日本人スタッフがいましたので早速通訳を頼

まれ働くことができました。少しのお金でしたが子どもたちの食べ物を得るのには役に立

ちました。思いがけなく見通しが開け始めました。そこでご夫君と再会することができま

した。聖書のとおりでした。「聖書から忍耐と慰めを学んだので希望を持ち続けることがで

きた」(ローマ15:4)。

 どこにも、世界のあちこちには希望を持ち続ける人々がいます。だからわたしたちは希

望することができるのです、と言いきりました。

 家族を殺害された音楽家が以後音楽をすることができなくなって廃人同様になりました。

しかし彼は新たな道を探ります。殺害者本人を刑務所に訪ねて彼を「赦す」と言った、そ

のとたんすべてが新たになったと言うのです。赦すとは、自分を解放することだったので

す。そうやって苦難のなかから自分を新たにした人がいるのです、といわれました。ひと

は、憎しみをいだいて生きることはできません。

 講演会で、マリールイーズさんは、民族衣装を身につけておられましたが、頭に巻きつ

けているものは何かとの質問に、実物で教えてくれました。それをほどきます。するとそ

のやや厚手の布は二メートル四方のものです。ふろしきに似ています。聴講している中に

女の子を連れた方がいました。その女の子を呼び寄せて、その子を布で包みます。包み込

んだまま背中にのせ、両脇に包み込んだ両端をしばって胸の前に挟み込みます。負ぶい紐

で肩にかけないので、肩が凝らないとのことです。また夜になりますと冷えますので、そ

の布で体全体を肩からつつむことができます。防寒のためです。とても便利で有効な役割

をする布であることをやや自慢げに話されました。

 会場の人からの質問に「わたしはできそうだなと始めたら、なんとかしてそれをやりつ

づけることだ」というのが信念みたいなものです、といわれました。必ず道が開けます!

新しい力をいただいた一日でした。

                                  雨貝 行麿