館長の言葉

11月  聖マルチィヌスの日に、子どもたちへのお話し。

北海道の教会では、主日礼拝にあたって、その礼拝の前半で子どもたちへの福音宣教と

してのお話しをすることをしている教会が多くなりました。

 子どもたちに11月には聖マルチィヌスのことをお話ししました。

聖マルチィヌスはキリスト教の歴史では紀元316年から397年の人です。ローマ帝国の

広がる、その周辺地域ではキリスト教の取り扱いが、迫害から一転して、これを認めると

いう時代になると、公認宗教となるのですから、それなりの理論構築をしなければなりま

せん。いわゆる教会全体を包括する教会会議(公会議といいます)が開催されて教理をめ

ぐる論争がおこなわれます。一方では、キリスト教のさまざまな言伝え(伝承)も生まれ

ます。そのなかのひとつは、キリスト教をその信仰や宗教の本質を喧伝するのではなくて、

多くの人々に理解しやすい方法で伝えようとしています。聖マルチィヌスや聖ニコラウス

の伝承がそうです。

 さてマルチィヌスは若いローマの軍人でした。15歳の時、人々が冬支度をおえたころ、

今のフランスの北東部アーミアンの街の市門の近くを馬に乗って通り抜けた時、そこにひ

とりの貧しい身なりの見ず知らずの人が凍えていました。多くの人々が行き交っていまし

たが、その貧しい人をだれも見向きもしませんでした。が、マルチィヌスは彼を見て、何

が彼に必要か、彼が「今ほしいもの」ではなくて『何が必要か』を判断しました。直ちに

腰にはいていた剣で自分の羽織っていた外套を半分に切り裂いてその半分を彼に与えます。

 マルチィヌスは、夜、ベットに入ってから一日の出来事を、あれやこれやと考えている

うちに昼間の外套を与えた人のことに考えが行き着きました。ああしてやりたかった、こ

うしてあげればとの思いを巡らしているうちに眠りについてしましました。

 夢の中にイエスさまが現れます。イエスさまは言いました。「昼間、あなたは門の傍らで、

貧しい人に外套を与えましたね。その人こそは、わたしだったのですよ」。

マルチィヌスは、やがて18歳で洗礼を受けました。ローマ社会のあちこちで問題が起こ

りだした時代、彼は馬にまたがって巡り歩き、貧しい人たちのために、その『必要なもの』

を与えることをした、ということです。その事蹟のゆえに、教会は彼を「聖人」に列した

のです。

 1111日、その日がこのマルチィヌスの日といいます。やがて11月の終わりは待降節

(アドヴェント)になります。イエスさまの地上へのお誕生をお待ちしますね。そして12

6日が聖ニコラウスの日、彼もまた345年から352年現トルコ(当時はミラ)で、3

人の娘たちに、人知れずに夜金貨をおくり、彼女たちの身に迫る危機から救い出した、と

いう説話が伝えられ、これが今日では12月の初めに、街に子どもたちを訪れては「役に立

つ」ことをしましょうと説諭する司教となる話しに展開します。

 キリスト教が、まだまだ人々の間でどんな宗教かわからない時期に、社会の中で、ひと

がどんなことをこころざすのかを子どもたちに示したことでした。

 間もなくクリスマスです。さて今年は、どのような働きを人知れずにしましょうか。

寒くなりました。大切にお過ごしください。

                                  雨貝 行麿