館長の言葉

3月。過日、わたしは日本キリスト教婦人矯風会札幌支部の会に招かれました。

わたしの、婦人矯風会との出会いは、神学校の図書館においてでした。1960年代の終わり、

小柄な、黒のスーツの老婦人がノートをとっていました。久布白落実(くぶしろおちみ)

さんでした。北森嘉蔵先生が、80歳を超えて、牧師試験の準備でおいでになっていると紹

介して下さいました。間もなく合格したと知らされました。矯風会の精神は、主の言葉に

仕えることにある、との感慨を抱きました。

神学校をおえる頃、矯風会から招待がありました。赴任地にむかう若い伝道者たちをお

食事に招いてくださるとのことでした。東京大久保にある矯風会館でした。会のおわり、

矯風会の方が、「任地でのお働きを祈ります。日本各地に矯風会の働きがありますから応援

してください。」と託されました。困難を予想させる働きにでる若者たちへの愛情と敬意を

感じました。

大学を引退して、まもなく北海道クリスチャンセンター館長を依頼され、その任職式に

矯風会の代表する方々が参加してくださいましたので、お礼を申し上げました。代表であ

った山田道子氏がセンターを訪れて、例会の際の礼拝で説教を依頼されました。矯風会の

基本が息づいていることを感じました。かって卒業時に礼節をもって対応されていた婦人

矯風会の方々の佇まいです。キリスト教信仰をもって生きていくということは、人に、そ

れが「若い」人に愛情をもって接するのみならず敬意をいだく、ということであるとわた

しは受けとめたのです。

 今回は、代表が清水幸子氏でした。資料をととのえて、新年の例会の案内をしてくださ

いました。中心になっておられた方々が日本キリスト教会北一条教会の方々でしたので会

場は当教会でした。そこで以下のようなお話をいたしました。

 「はじめに、今、世界を創造し、救済する神さまを信じる人たちのなかで『日本は平和

で、戦争の心配はない。』という人たちが増えつつあるなかで、矯風会の目標の第一に示さ

れている「世界の平和」はますます貴重です。この目標は、かって戦争にむかっていく日

本に対して警告する役割を果たさなかったことを反省して目標を新たにしたことでしょう。

日本の女性たちのなかで先駆的な働きをしました。

「潮田千勢子」(すでに歴史的人物です)は足尾銅山鉱毒事件を座視・傍観することなく、

被害者救済の活動に挺身、田中正造に従って拘留された十代の黒沢酉蔵に聖書を差し入れ

た、これが信仰者黒沢の始めになりました。彼女がいなければ酪農学園はないのです。人

間に対する小さな働きが、実に大きな実を結ぶのですね。

「久布白落実」今では歴史上の人物になられました。女性の人権を確立するためには「参

政権」こそ不可欠とする、としたら、彼女もまた果敢でした。婦人参政権運動の事務局長

として活躍しました。旧憲法下において「女性の権利」の主張は困難をきわめました。だ

からこそ彼女は携わりました。法的権利が実現したのち、今度はもっと深い位置へ、人間

の心をこそ養うことが不可欠として「牧師」として働きました。2009年著作集6巻が出版

されました。わたしは北海道立図書館に購入を願いました。配架されましたのでその第一

巻を最初に借り出しました。」終わりに、たぐいないお働きのために祈りました。

                                  雨貝 行麿