館長の言葉

札幌でも、この夏は暑い日々がつづきました。10月に入りますとようやくすずしくな

り始めています。街も静かになってきたように思います。

 北日本の大災害にむけた支援活動の一次五次の活動は、6月をもって終わり、新たな段

階にはいります。当センターからは「いてもたってもいられない」で「とるものもとりあ

えず」支援にでかけましたが、最近になると、現地のひとびとが、前にむかおう、という

気持ちがわきあがってき始めましたので、現地再生の働きを阻害してはならないと、ころ

あいを見計らって次の段階へのてだてを模索して見守っています。

ちょうどその分岐点ともいうべき8月、札幌YWCAが福島県新地町の教育委員会との連

携で、その地の子どもたちとその親たちを札幌に迎え入れました。

題して「北の大地で過ごす夏休み~みどりの風にふかれてみようよ~」でした。NPO「む

すびば」の協賛、札幌聖心女子学院のご協力でその寄宿舎が提供され、北海道クリスチャ

ンセンターもその宿泊を提供しました。ヴォランテイアの大学生たちも手伝いました。

さて実施に際して、子どもたちが経験した未曾有の出来事がこころのトラウマになって

いることに気遣いました。

ひとつは、水の動きが怖いということです。海が怖い。それとコンビニ弁当みたいな弁

当は避難所で毎日毎回食べてきましたので、あたたかな手造りです。

札幌で、子どもたちが「みどりの風」、北海道のさわやかな夏に山野で駆けずり回りまし

た。この当たり前なことは今の福島の子どもたちにはできないでいたことです。また、朝、

YWCAの方がたがもりつけたサラダとスープがとてもおいしかった、とのことです。

子どもたちは新地の街並とはいささか異なる、ひろいひろい北海道大学のキャンパス、

そして北国の樹々のなかでの散策、整然とした人工的な街並みが新鮮だったようですね。

だれにとっても、世代をこえて「旅行」というのは心躍ることです。お友達と気の置け

ない会話というごく普通のことが、ようやくできたということでした。

瓦礫の中の毎日、その空気の匂い、失われた景色、なによりもお友達や親戚の人たち、

それらから一時的にも離れての10日間でした。しかし、帰ってから、自分たちの身の回り

から失われたことがどんなにおおきいか、感じてしまうのではないか気がかりでした。

今回、支援委員会の報告会が行われました(929日当センターで)。20代の青年たち

が大船渡と釜石での活動を、良く準備して、人々との交流をいきいきと語ってくれました。

古老の方が言います「津波はくるもんだよ。」。そして若いヴォランテイアに言葉をかけ

たという「あんたらが来てくれて、何かそろそろやつてみようかなって気になってきた。

ありがとう。」。

青年たちが、現地で生活をしている人々の、ゆっくりと、しかし確実で、前向きのここ

ろになりはじめている、そのこころのきざはしを感じて、じつはとても励まされました、

と語ってくれました。わたしは ついめがしらが熱くなりました。共にいて、知らず知ら

ずに、ひとはひとを励ましている。そして、かえって今度は励まされる。出会いがあった

から、「また行きたい。」

センターで過ごした子どもたちから便りがありました。『大人になったら札幌に行ってク

リスチャンセンターにおじゃましまーす!』。

                                  雨貝 行麿