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Logos 今月の言葉


2015年 2月 館長からのメッセージ
  

 ドイツの大統領であったリヒヤルト・フォン・ワイツゼッカー氏がその生涯をおえました(131日)。
 198558日当時の西ドイツ連邦議会で『荒野の40年』とした演説は、人々に深い感銘を与えました。その40年前、ナチス・ドイツがヨーロッパ全域を12年間、殺戮と破壊にまきこんで「ゼロの日」と呼んで終焉した、その後の40年を「こころに刻みこむ」時期であった、と語りかけたのです。
 ドイツは9カ国と国境を接しています。スイスとは戦争をしませんでしたがノルウエー、イギリス、そしてソ連とも戦争をしました。戦争では、戦闘でひとを殺害するばかりか無辜のひとびとをも巻き込むだけではなく殺戮し破壊します。ヨーロッパを再び殺戮と破壊の現場にしてはならない、との意志をお互いに確かめあいましょうとの提言を広く訴えることでありました。
 戦後まもなく、シュトゥッツガルトでドイツの教会人たちが『罪責宣言』をしました。戦争の時代に対して「責任がある」。「われわれはもっと大胆に告白しなかったこと、もった忠実に祈らなかったこと、もっと喜んで信じなかったこと、もっと燃えるような思いで愛さなかったこと」。そこで新たな出発は、聖書に根ざし、真実をもって教会の主によってのみ導かれるように祈る、としたのです。
 その後、1963年西ドイツ、コンラート・アデナウワー首相とフランスのシャルル・ドゴール大統領とがフランス、ランスの大聖堂に会して,和解への道を切り開き出しました。いわゆる「エリゼ条約」です。将来を見据えた共存平和の道はその後750万人の青年たちの交流、姉妹都市2、200、今日のEU共同体形成に不可欠な働きでした。
 197910月、ウィリー・ブラント西ドイツ首相はいわゆる東方外交を探り出し、ポーランド、ワルシャワで祖国のために人知れず生命をささげた記念碑の前で、思わずその両膝をおってぬかずいたのです。
 過去を無かったことにしてはならないし、無視してはならない。和解することの秘儀は、心に刻みつけることだと。
 アデナウワーもブラントも、それぞれナチスの時代は、その活動は忌避されて、その職を失い、亡命を余儀なくされた方々でした。過去に起こった出来事を心に刻みながら、和解のヴィジョンを心に描いていたのでしょう。
 1985年ワイツゼッカーは、過去の出来事を数え上げるようにして語りだしました。真実を求めるように、過去の出来事を心に刻むことを提唱します。「過去の出来事に目をふさぐ人は、結局のところいま、自分の前に起こっていることを見ることができないのです。非人間的なことが行われていることに無関心であると、その危険を冒しやすいのです。」そして「心に刻むということは、歴史の中で神のみ業を目のあたりにすることです。これこそが救いの信仰の源泉です。この経験こそが希望を生みます。」そう、イスラエルの民が40年荒野出さ迷い、手に入れた神の真実とおなじようだと語り、さらに、終わりには「自由を大切にしよう。平和実現のために働こう。正義を実現するための内面の規範に従おう。」と結びました。いま改めてこの言葉をかみしめます。2月11日は信教の自由を「心に刻む」ときです


                                     雨貝行麿

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