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Logos 今月の言葉


2017年 7月 

今回は第2回『がん緩和ケアに関する国際会議』からの報告をいたしましょう。東札幌病院(理事長石谷邦彦氏)が主催です。石谷氏はすでにホスピス病棟を設置し、北米の先進的な取り組みをしている病院、医師たちとの連携を意欲的に交流し、がん患者のケアの働き、とくに緩和ケアの医療の大切な方針を展開されています。
今回の会議に、招待されて講演をききにまいりました。

キリスト教の歴史のなかでは、「やまいをいやす」ことは最重要課題に位置付けてきました。たとえばフランスのアルルで、ゴッホは自分の病に気づいて「オテルデュ」に駆け込みました。それは「神の家」を意味します。パリ大学病院は「オテルデユ」が源です。病院専属の牧師・司祭が病を持つ人々の不安、苦痛に寄り添う働きをしてきました。病室のベッドの傍らに語り掛ける人の椅子がおかれています。そのような働きからホスピスをてがけてきた働きをしてきました。
日本では80年代になってその働きが紹介され、いくつかの病院が手がけました。
 札幌では、今回の会議は、この働きを一層進める働きです。
 長い間、病院の基本、医師の務めの基本的な姿勢は「病気を治癒する」ことでした。患者は医者まかせでした。しかし、最近の医療現場では、医師が病人を治療することをと同時に患者自身も自分の症状を理解して対処すること(インフォームド・コンセプト)が大切だという考え方がでてきました。そのことが治療に有効なその成果が期待できる、という認識になってきました。
 今回の会議に際して、初めに心理学者たちが病を得た人間の全人的状況を多角的に把握する方法に関して講演されました。これが一つの柱でした。 
講演は「進行がん患者の人生の意味に焦点をあてた集団療法」「がん再発に対する不安を、私たちはいかに克服するか」「思いやりと共感をもってがん患者に深刻な病状告知を行うためのスキルを育てる」といったテーマでした。このように、がんの医療に対して、今日の先進的医学的治療的方策というよりも、患者の側に立っていかに苦痛や不安を軽減して、その患者の生命活動を、より良質の(QOL生活の質)ものへ転換していくかということでした。
 わたしの両側で傾聴していた若い方がたに休憩の時、声をかけました。医師でした。いま、患者の苦痛をいかに軽減してQOLを保っていくか、従来の医療行為の認識と方法をいま模索している、とのことでした。
 新たな医療従事者たちの登場がはじまっている、とのうれしい感想をあたえてくれました。主催者の東札幌病院理事長石谷邦彦先生に、会議の合間をねらって「先生は、どうしてこのような会議を企画されたのですか、その原点は?」とお尋ねしまいした。
 先生は「いままで、患者の方々が家の中にいて、ただただじっと苦痛を我慢しているだけだったのですよ、その様子を知ったからです。」
医師という働きは、病気を治すということもさることながら、ひとの苦痛を軽減するという患者に寄り添うことに心砕く。敬服しますね。大きな財政の負担をおっておられることでしょう。
                                      雨貝行麿